保険会社に賠償金を請求するにあたって交渉で不利にならないためには

1.示談交渉を始めたものの…

Aさんは、自転車で横断歩道を渡ろうとしていたところ、急に左折してきた自動車と衝突してしまい怪我を負ってしまいました。Aさんは病院で治療を受け大事には至らなかったものの、治療費や入院費がかかってしまいました。そこで、Aさんは加害者が加入する保険会社に治療費等の支払いを求める示談交渉を行ったところ、保険会社から約30万円の示談提示をされました。しかし、Aさんはかなり高額な治療費などを負担していたことからこの金額に納得がいかず、弁護士に相談すべく法律事務所を訪れました。

Aさんのように、示談金や慰謝料などを減額された、もしくは減額された金額を提示されたという方がいらっしゃると思います。そこで、本記事では保険会社によって慰謝料・示談金を減額されない方法について解説したいと思います。

2.後遺障害認定手続きの流れ

示談交渉をまだ初めていないという方のためにも、交通事故後から示談交渉までの大まかな流れをご説明します。
まず、交通事故後は速やかに病院で受診しましょう。頭痛だと思っていても脳内出血や頭蓋内出血という重大な異変が生じていることがあるため、できれば事故後1週間以内、遅くとも10日以内に行くことをおすすめします。

治療後、医師から後遺障害診断書を作成してもらい、保険会社へその診断書を提出します。提出後に任意保険会社または自賠責保険会社から調査結果が通知されるという流れになります。

3.慰謝料が減額される理由

後遺障害認定についての調査結果が出たならば、保険会社との示談交渉に入ります。保険会社との示談交渉において保険会社が提示してきた額はAさんが想定していた額よりも低額の慰謝料でした。

このように、慰謝料が減額される理由はどこにあるのでしょうか?よくある減額のケースとしては、軽傷だった場合や、損益相殺が行われた場合、通院日数が少ない場合、過失相殺が行われた場合、素因による減額がなされた場合などがあります。

例えば、軽傷のケースでは通常のケースの3分の2程度に減額されることがあります(入通院慰謝料の場合)。任意保険基準や強制保険である自賠責基準によって入通院慰謝料を計算する場合には、重傷か軽傷かによる区別は行われていませんが、さらに低い水準になるおそれがあるので注意しましょう。

次に、損益相殺についてですが、被害者が受取金(自賠責保険からの受取金、遺族厚生年金、障害厚生年金、労災給付金、健康保険の傷病手当金、所得保障保険の受取金、人身傷害保険の受取金)を受け取った場合には、二重取りを防ぐために、かかる受取金分を差し引いた額が賠償金として支払われます。これを損益相殺といいます。もっとも、自損事故の保険金や、搭乗者傷害保険の受取金、生命保険金、傷害保険金、労災保険の特別支給金、香典やお見舞金、特別児童福祉扶養手当、身体障害者福祉法の給付については損益相殺の対象にはならないのでご安心ください。

4.保険会社への対応

(1)事前の準備の重要性

Aさんと示談交渉を行う保険会社は、Aさんを甘く見てさらなる慰謝料の減額を提示してきました。このように、被害者自身で保険会社と示談交渉をすると、被害者が素人であることを利用して、保険会社は不利な条件を押し付けてくる可能性もあります。そこで、このような事態にならないためにも事前に対応すべきことを理解しておくことで、その時々ですべき行動を予め把握でき、適切かつ余裕を持った行動を取ることができます。

(2)証拠を残す

相手方保険会社と示談交渉をする際には、示談交渉のやり取りの記録を書面で残しておくことが重要です。これによって、「言った」「言わない」などといった水掛け論を防ぐことができ、後日裁判に発展した場合でも有用な証拠として使うことができます。面談時には、必ず相手側の許可を取ったうえで、ボイスレコーダーなどに録音しておくなどの方法が適切でしょう。

(3)納得できない示談はせず、弁護士などに相談を

一度示談書にサインしてしまうと納得ができないという理由で覆すことはできません。そのため、納得しないままの示談はしないようにしましょう。
被害者のみで保険会社と交渉を行うと、保険会社は任意保険基準という低い水準に基づいた慰謝料を提示してきます。しかし、弁護士が示談交渉をすれば弁護士基準に基づいた慰謝料を提示してくることがあるため、減額がされずに済む可能性があります。なるべく減額されないためにも弁護士に依頼した上で示談交渉を行うことが有効です。
もつとも、弁護士を付けたとしても保険会社が応じない場合には裁判を行うことも可能です。裁判になれば時間も費用がかかりますが、10割の慰謝料を獲得することができる場合もあります。裁判を行うとなるとより専門的知識が要することになるのでこのような場合にも弁護士に相談してみましょう。

5.保険会社は味方ではない!

事故によって後遺障害を負ってしまった場合は、身体的な障害を負うのみならず、精神的にも落ち込んでしまうことがあります。そして、被害者の多くは交通事故に遭ったことや示談交渉を行うことが初めての方ばかりです。そのため、キャリアとスキルを積んだ交渉のプロである保険会社には、専門的知識や法的知識を持って交渉に及ばない限り不利な条件で示談書にサインをさせられる可能性があります。担当員はスムーズな交渉とお互いに満足がいく結果を目指して示談を進めますが、結局は加害者の代理人であるため、基本的に被害者にとって有利に話を進めてくることはありません。

そのため、保険会社から減額の提示を受けた場合、感情的になって侮蔑的言葉を発してしまうケースも生じています。しかし、感情的になってしまいますと、保険会社も不快に感じてしまいスムーズな交渉を行うことが難しくなります。保険会社に対しては冷静に対応するよう心がけましょう。

6.さいごに

保険会社と慰謝料について示談を進める場合には、足元を見られる可能性があります。そこで、示談交渉を有利に進めるためには、まず保険会社の対応を理解しておくことで、その時々ですべき行動を予め把握でき、適切かつ余裕を持った行動を取ることができ、より多くの示談金を獲得することができます。もし、交通事故に関することを行政(川口市)や弁護士に相談したいときは下記のお問い合わせ先にご相談下さい。

 

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