特定調停を選択する前にデメリットもきちんと理解しておきましょう


特定調停は任意整理や自己破産などと同じように、法的な債務整理の方法のひとつです。任意整理は弁護士が介入して元金を長期分割で全額返済する方法で、債務の圧縮効果は少ないのですが財産を失わずに済みます。これに対して自己破産は債務の全額を免除してもらうかわりに、生活資金を除いた全ての財産を失うことになります。自己破産は自力で手続きを行うことが可能ですが、ある程度の法律の知識が必要なので普通の人は弁護士に依頼する必要があります。任意整理や自己破産の手続きを弁護士に依頼すると手数料が必要であるというデメリットがあります。自己破産であれば50万円以上もの費用が必要で、手続き後に弁護士費用を支払わなければなりません。

自分で手続きをすれば手数料が安い

特定調停は任意整理と自己破産とは異なり、法律家の助けを借りずに自分で裁判所で手続きを行うことができます。そのため手続きに必要な費用が格安で済むというメリットがあります。自己破産のように資格制限がないので、仕事を失う心配もありません。自己破産は一定額以上の債務がなければ認めてもらえませんが、特定調停は返済が可能な状態でも手続きに入ることが可能です。この方法を利用して債務整理をすれば格安の手数料で済むという大きなメリットがありますが、デメリットも存在する事を知っておく必要があります。
特定調停の大きなデメリットですが、自分で書類を作成して平日に日中に裁判所に出頭しなければならないこと・他の債務整理のようにすぐに返済の督促が止まる訳ではないこと・交渉の内容によっては債務の圧縮幅が少ない場合がある事などが挙げられます。
インターネットなどを調べながら自分で書類を作成することは可能ですが、仕事をしている方であれば平日の日中に裁判所に出頭することが問題になる場合があります。裁判所に出頭をしなければならない期日は最低2回ですが、これは債権者が1社のみの場合です。一般的に複数の金融会社から借り入れをした多重債務の状態で債務整理を行うため、何度も裁判所に出頭をしなければならないケースがほとんどです。住んでいる場所によっては、裁判所に行くために丸1日仕事を休まなければならなくなってしまいます。借金の返済に追われながら仕事を休んで収入が減ってしまうことは、非常に大きなダメージです。

書類作成に時間と手間がかかる

任意整理の場合は弁護士が受任した時点で借金返済の督促がストップしますが、特定調停の場合には申立の手続きが完了するまで返済の督促が続くというデメリットがあります。書類作成に不備があるなどして申立が遅れてしまうと、債権者からの督促が続くことになります。任意整理であれば弁護士が債権者との話し合いの際に過去に金融会社に支払った過払い金返還請求の手続きも一緒に行ってくれます。これに対して調停委員会は過払い金の返還請求をしてくれないので、債務整理とは別に民事訴訟の手続きをしなければなりません。弁護士や司法書士に依頼をしなくても過払い金請求の訴訟を起こすことは可能ですが、煩雑な手続きと時間がかかってしまいます。過払い金が存在しない場合でも債権者と交渉することで債務を圧縮することができる場合がありますが、必ずしも債務額が減るとは限りません。債務の金額が大きすぎる場合には、裁判所が返済不可能と判断して個人再生か自己破産などの別の方法に移行しなければならなくなる恐れもあります。
話し合いがまとまって返済を行う際も注意が必要です。計画通りに返済が行われずに支払いの滞納があると、強制的に財産の差し押さえが行われるというデメリットもあります。任意整理であればやむを得ない事情で返済が遅れても弁護士が交渉してくれますが、裁判所が介在する場合にはすぐに強制執行が行われてしまいます。
特定調停は弁護士費用が不要なので手数料を節約する事ができますが、多くのデメリットが存在することもきちんと理解しておく必要があります。

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