痴漢で捕まったらまず弁護士を!家で普段通りの生活を送れる在宅事件とは?

在宅事件となるための条件

在宅事件は、一般的にイメージされる刑事事件とは違います。刑事事件と言えば、逮捕され、留置場などに拘留されると思っている人も少なくないでしょう。ですが痴漢などの軽微な犯罪で捕まった場合はその限りではありません。刑事事件の弁護士に依頼して痴漢事件の量刑を軽くしようと考えている人は、在宅事件の基本と注意点を知っておいたほうが良いです。
在宅事件とは、在宅起訴扱いとなり、留置場などの刑事施設にいなくても良いと判断された事件のことです。「痴漢で捕まってこのまま留置場に入れられて帰れないかもしれない」と不安がっていた人は、安心しきってしまうかもしれません。ですが注意してください。その後の対応が不適切だったり不十分だったりした場合、在宅事件から身柄事件に切り替えられるかもしれません。身柄事件とは、逮捕され、刑事施設に拘留されて取り調べを受ける事件のことを指します。
そういった事態を避けるには、在宅事件について知り、なぜ身柄事件ではなく在宅事件となったのか、そのポイントを知っておくべきでしょう。
まず在宅事件になるには、軽微事件であることが前提です。痴漢は軽微事件に当たります。軽微事件とは懲役刑のみでなく、罰金刑などが定められている刑罰のことを指します。懲役刑のみである殺人事件などはこれに当てはまりません。しかし痴漢であっても、常習犯であるなどの理由によって犯行の態様が重いとみなされた場合は、在宅事件として認められないことが多いです。
他にも在宅事件となる条件として、被疑者が事実を認めていて逃亡や証拠隠滅のおそれがないことなどが挙げられます。定住する場所があって、家族と同居している場合、在宅事件として認められる傾向があります。

在宅事件の注意点

在宅事件として認められ、普段通りの生活を送れるからといって油断してはいけません。身柄事件にはない注意点が在宅事件にはいくつかあります。
まず在宅起訴は長期化する傾向があります。身柄事件で身柄が拘束された場合、その期間は起訴前で二十三日間以内でなければならないと法律で厳格に定められているのです。ですが在宅起訴は身体拘束という人権に関わる行為を行わないため、期間の制限が設けられていません。場合によっては、捜査開始から起訴か不起訴かの決定までに何ヶ月もかかることがあります。
この長い期間に、不適切な行動を取ることは避けなければなりません。例えば警察官や検察官からの電話や呼び出しにはきちんと応じましょう。もし応じない場合は、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断される可能性があります。もしそうなれば在宅事件ではなく身柄事件に切り替えられることもあり得ます。また、長期間に及ぶ不安から被害者に示談を頼みに行きたくなるかもしれませんが、絶対にしてはいけません。捜査機関に誤解される行動は慎みましょう。痴漢行為を再び行わないことは言うまでもないでしょう。在宅事件は確定したことではなく、被害者の非協力的な態度や不誠実な行動などによって、身柄事件に変更になることもあるということを忘れてはなりません。
他にも、起訴前に国選弁護人を選任する制度がないことにも注意が必要です。身柄事件の場合は、弁護士を選任できることを捜査官から教えられます。そして被疑者が弁護士を雇うお金を持っていない場合は、国選弁護人が選任されます。しかし在宅事件の場合は、自分で私選弁護人を選任しなければ、弁護士の援助を受けられず、検察官との交渉や示談に必要な弁護活動を行ってもらえません。
特に、被疑者との示談は、起訴か不起訴かの判断に大きく関係します。しかし加害者が被害者に接触することは禁止されているため、弁護士抜きで示談交渉を進めるのはまず不可能でしょう。弁護士選任の機会を逃さず、刑事事件に強い弁護士を選任することが大切です。

在宅事件でも弁護士に依頼するメリットとは?

痴漢を犯した人の多くは、前科がつくかどうか不安に思っていることでしょう。前科がつくかどうかは、起訴されるかどうかに大きく関わってきます。前科とは、起訴されて有罪判決を受けることを指します。法律上は前科という言葉はなく、一般用語です。起訴されて無罪と判断されることは滅多にありません。つまり前科がつくかどうかの分かれ目は、起訴されるかどうかにかかっていると言っても過言ではないのです。
不起訴になるケースは、全部で三つあります。冤罪であり無実が証明されて「嫌疑なし」と判断された場合、証拠が十分ではなく「嫌疑不十分」と判断された場合、起訴猶予処分の判断材料があり「起訴猶予処分」と判断された場合です。起訴猶予処分の判断材料になるのは、軽微の犯罪であることや初犯であることなどです。弁護士は、痴漢行為を認めている被疑者を弁護する際は、起訴猶予処分を目指します。
弁護士を選任せず、不起訴を勝ち取るのは極めて難しいと言わざるを得ません。不起訴の鍵となる示談は、弁護士に頼まないとまず不可能だからです。軽微な犯罪である在宅事件であっても、加害者が被害者に直接示談交渉をすることはできません。弁護士ならば被害者に会って示談交渉を行うことができます。また、弁護士は専門家ですので、不起訴処分を勝ち取るのに必要な証拠を集めることが可能です。在宅事件でも弁護士に依頼した方が上手く行きやすいでしょう。

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