加害者向け弁護士依頼の知識。業務上横領罪とはどんな犯罪か
業務上横領罪とは
業務上横領罪とは、仕事をする上で会社から預かり管理している金品を、自分のものにしてしまう犯罪のことです。刑法253条に記述があり、「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する」とされています。
横領とは自分が占有している他人の金品を横取りする罪、業務上とはここでは反復的、継続的に行われている事務のことを言います。例としては、従業員が会社から預かったお金を自分のものにするケースや、運送業者が荷主の荷物を横領するケース、自治会やサークルの会計責任者が集めた活動費を自分で使ってしまうケースなどが挙げられます。具体的にお金を手に入れるだけではなく、会社の売上金などを操作してお金を使いこむことも業務上横領罪に当たります。
業務上横領罪の法定刑は「10年以下の懲役」であり、単純に他人のものを横領するよりも罪が重くなっています。会社から任された仕事を利用した犯罪で、信頼関係を破壊する行為であることから、より悪質だと判断されるためです。仕事をする上で犯してしまう犯罪なので反復的に行うことも多く、被害額が大きくなる傾向があるのも大きな特徴と言えるでしょう。また、告訴されたときに横領したお金を使いきっていると弁済が難しくなり、場合によってはいきなり実刑判決を受けてしまうことも考えられます。できるだけ早く弁護士に依頼することで、刑を軽くすることを考えなければなりません。
逮捕された後の流れ
業務上横領罪で逮捕されてしまうと、その後はどのような流れを踏むのでしょうか。
刑事事件の流れは大まかにはどれも同じです。逮捕された後はまず警察による取り調べがあります。これは逮捕後48時間以内に終了させる決まりがあり、その間は例え家族であっても面会することはできません。会社関係者も事実関係を知りたいと焦るでしょうが、やはり同様に面会はできません。唯一の例外が弁護士で、被疑者と面会して会話をすることができます。
警察の捜査が終わると、被疑者の身柄は警察から検察へと引き渡されます。今度は検察官による捜査が行われる流れとなりますが、こちらは24時間以内に終了させなければならない決まりとなっています。ただし通常24時間で検察の捜査が終わることは少なく、身柄を拘束され続ける勾留がなされることとなります。
ここで大切なのが、警察や検察の取り調べに対して言い逃れをしないことです。業務上横領罪を犯してしまった人は知恵が働く人が多く、何とか罪を逃れようと手を打とうとする人も少なくありません。しかし警察や検察は捜査のプロです。言い逃れをしてもすぐ見抜かれてしまいますし、言い逃れや言い訳を繰り返すことで反省していないと判断され、量刑に大きな影響が出ることも少なくないのです。取り調べに対してどのように受け答えすればよいかは、弁護士にアドバイスしてもらうことができます。そういった意味でも、早めの依頼が重要になると言えるでしょう。
捜査が終了すると、被疑者を裁判にかけるかどうか、つまり起訴するか不起訴処分とするかが決定されます。起訴されると刑事裁判にかけられ、不起訴の場合は身柄を解放されます。日本の刑事裁判は有罪率が99.9%と極めて高く、いかにして起訴を回避するかという点が大きなポイントとなるのです。
主な弁護活動
ここでは、業務上横領罪の加害者向けに、弁護士がどのような弁護活動を行うのか紹介します。逮捕された後は一定の流れで刑事手続きが進められていきます。その流れにどのような形で弁護士が介入するのか、詳しく見てみましょう。
弁護活動としてはまず被害者との示談を目指すという方法があります。示談とはお金を支払って相手に謝罪し、和解を目指すという方法です。ただし業務上横領罪の場合、損害額が大きくなる傾向があるため、すぐに弁済することが難しいというケースも多くあります。その場合は誠意をこめて謝罪し、今後どのように弁済していくかしっかりと取り決めをすることで和解を目指すという方法を取ることになります。被害を受けた側は早く被害金額を弁済してもらいたいと考えるため、納得してもらえるような交渉を行うことが重要になります。和解を目指すあまり相手が望むままの条件で示談しても、その内容通りに弁済できなければかえって被害者感情を逆なでしてしまうことになります。相手に納得してもらいながら、かつ弁済可能な範囲での示談を行うためには、やはり交渉に慣れた弁護士が被害者と加害者の間に立つことが必要になってくるのです。
示談を目指すとはいえ、加害者がしっかりと反省することは不可欠です。「お金を払えばゆるしてもらえる」というものではありません。反省しているか否かは警察や検察にしっかりと見ぬかれてしまいますし、反省の色が見えないままでは、その後の判決にも悪影響を及ぼすことがあります。
業務上横領罪は被害金額が大きくなりやすく、いきなり実刑を受けることも珍しくありません。逮捕後の行動に悩んだときは、弁護士に相談して今後取るべき行動や対処法についてアドバイスを受けましょう。