借金した場合における川口市で個人再生する際のメリットとデメリットについて
膨らんだ借金を返せない!?
Aさんは、某年某月からクレジットカードを使ってブランド品などの高級品を購入していました。しかし、商品の購入金の返済のめどが立たなくなったため、次々と消費者金融業者等から借入れを行っていました。Aさんは、翌年これ以上の借入れをしても返済できる見込みはなかったにもかかわらず、更に複数の消費者金融業者から借入れをしてしまいました。その結果、Aさんは合計約480万円の債務を負うことになってしまいました。そこで、Aさんは民事再生法に規定されている個人再生という手続きを行うことを考え、弁護士事務所を訪ねました。
Aさんのように、消費者金融やクレジットカード等による多重債務を負う消費者が現在も増えています。そこで、以下ではこのような多重債務に窮する方々が家計を再建するために利用しやすい手続きである個人再生について解説していきたいと思います。
個人再生とは?
(1)3つの特則について
民事再生法は、債務者が個人であって、かつ、一定の要件を満たす場合にのみ適用される3つの特則を置き、通常の民事再生手続きよりも簡易迅速な手続きである個人再生を用意しています。その特則とは、第一に小規模個人再生に関する特則(民事再生法221条~238条)、第二に給与所得者等再生に関する特則(民事再生法239条~245条)、第三に住宅資金貸付債権に関する特則(民事再生法196条~206条)の3つです。
このように、個人再生には3つの方法があります。以下でそれぞれの特則について詳しく紹介していきたいと思います。
(2)個人再生と破産手続きとの違い
まず、前提として破産手続きと個人再生(民事再生)は大きく異なります。
破産手続きは、債務者の総財産を現実に売却ないし処分することで金銭化し、その換価金を各債権者に配分します。
これに対して、個人再生(民事再生)は、債務者の所得を維持し、あるいは、その事業の収益力を向上させ、負債を所得・収益で支払える範囲にまで圧縮することにより債務者の支払能力を回復させることを目的としています。また、裁判外の倒産処理について私的整理や、特定調停、クレジットカウンセリングなどの多重債務の状態にある消費者に対する経済的再生が図られる手段が用意されています。
(3)個人再生の特色について
次に、個人再生の特色について見ていきたいと思います。
小規模個人再生や給与所得者等再生は、負債総額が多額ではない個人債務者を対象とする簡易な手続きです。具体的には、経済生活の再生を図りたい個人債務者が再生手続きを利用しやすいように、債務者の負債額や収入の見込みについて一定の要件を定めつつ(民事再生法221条、239条1項)、再生債務者の監督や財産等の調査のために必要な場合に選任される個人再生委員の職務を必要最小限のものとして、通常の手続きで選任される監督委員や調査委員に比べて報酬や費用を低廉に抑え、債権の届出や調査の手続きを簡略化するなどしたりしています。
小規模個人再生を行うには?
小規模個人再生を行うことができるのは、①通常の再生手続開始の要件(債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれ、または、債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき)を満たしたうえで、小規模個人再生特有の要件たる、②債務者が個人であり、③将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあり、④再生債権の総額が5000万円以下であるという4つの要件を満たした場合です。
小規模個人再生の利用については、定期的でなくても、あるいは額の変動の幅が大きくても継続的収入または反復的収入の見込みがあれば足ります。自営業者や、収入額の変動の幅が大きい方や、収入の時間的間隔が大きい方(農業従事者など)が利用されています。
これらの要件を満たした場合に、裁判所は小規模個人再生による再生手続きを開始することになります。
給与所得者等再生とは?
給与所得者等再生は、小規模個人再生と比べると定期的収入があるため所得額の見込みが立ちやすい個人債務者がより簡易かつ迅速に個人債務者の再生を図るための手続きです。
給与所得者等再生を行うことができるのは、①小規模個人再生の開始要件(債務者が個人であり、将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあって、再生債権の総額が5000万円以下である場合)を満たし、②給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、③その額の変動の幅が小さいと見込まれるものである場合です(民事再生法239条1項)。
サラリーマンや年金によって生計を立てている方が利用しやすいものとなっています。
住宅資金貸付債権に関する特則について
住宅資金貸付債権に関する特則とは、住宅ローンの返済が困難となった方が住宅を手放すことなく経済生活の再生を図るために設けられた手続きです。
対象となるのは、①貸付債権が住宅の建設または購入、住宅の用に供する土地または借地権の取得、住宅の改良のいずれかの行為に必要なものであること、②分割払いの定めのある再生債権であること、③その債権またはそれを保証した保証会社の求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されていることが必要です。
個人再生の流れ
次に、個人再生の流れは以下のとおりです。
- 再生手続開始の申立て
- 再生手続開始の決定
- 再生債権の届出
- 再生計画案の提出
- (小規模個人再生の場合)書面による決議
- (給与所得者等再生の場合)再生債権者の意見聴取
- 再生手続の終結
- 再生計画の遂行
という流れになります。
個人再生を行うことのメリットとデメリット
では、個人再生とは何かについて学んだ上で、最後に個人再生を行うことのメリットおよびデメリットについて説明したいと思います。
(1)メリットについて
これまでご説明してきたとおり個人再生は、債務者の所得を維持した状態で行える手続きです。そのため、住宅を手放すことなく手続きを行うというメリットがあります。
また、手続きが開始されると借金を所得・収益で支払える範囲にまで圧縮(最大で総債務額の10分の1まで圧縮される)されることから、債務が大幅に減ります。借金の総額が100万円未満の場合には借金全額を弁済しなければなりませんが、100万円以上500万円未満の場合には100万円の弁済、500万円以上1500万円未満の場合には借金額の5分の1の弁済、1500万円以上3000万円未満の場合には300万円の弁済、3000万円以上5000万円以下の場合には借金額の10分の1の弁済をすることになります。弁済額が再生計画によって決定された後、3年間の内で分割して支払っていくことになります(特別の事情があるときには5年間になります。)。
(2)デメリットについて
個人再生によるデメリットとしては、いわゆるブラックリストに載ってしまうため、数年間借入れを行うことができません。また、官報にも住所および氏名が載ります。
また、個人再生を行うためには債務者が将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあって、再生債権の総額が5000万円以下である場合という要件を満たさなければなりません。そのため、失業中の方は個人再生の利用することができないというデメリットがあります。
さらに、個人再生によって借金が減額されるのは本人のみであるため、保証人に対する借金の減額はなされません。そのため、保証人が付いている場合には保証人に借金の請求がいくことになります。
まとめ
以上のように、個人再生とは破産を回避して経済生活の再建を図ろうとする個人債務者に特化した簡易な手続きです。個人再生には、債務者にとって大きなメリットがある一方でデメリットもあります。これらの点を充分に考慮した上で個人再生を行うかどうかを検討してみてください。川口市では、個人再生を検討している方のご相談を承っています。お気軽にご相談下さい。